大規模製油所の自動化に向けたレトロフィットプロジェクト

Tupras社のIzmit製油所に設置したIQアクチュエータ

Tupras社のIzmit製油所に設置したIQアクチュエータ

  • 部門: 石油及びガス - 下流
  • カテゴリー: 電動アクチュエータ , 各種サービス   
  • 製品: Fire Protection, Retrofit, IQ Pro Standard

概要

トルコにおける主要石油化学工業近代化プログラムにはレトロフィットプロジェクトが含まれており、このプロジェクトでは、石油精製所のタンクファームにある900台以上ものバルブの駆動・制御を自動化します。Tupras社はトルコ最大の工業会社であり、大手の製油所です。また、4つの製油所を運営していますが、中でもKocaeli県のMarmara海沿いにあるIzmit製油所は最大規模を誇ります。Izmit製油所は1961年に最初に開業した製油所で、LPガス、ナフサ、石油、ジェット燃料、灯油、軽油等を含めた製品の生産量は年間で1100万トン以上に及びます。


概要

レトロフィットプロジェクトは、大規模な拡張プログラムの一環であり、インテリジェントアクチュエータや2線式デジタル制御システムの設置等を行います。また、このプロジェクトでは、Técnicas Reunidasというスペインの会社が隣に新たな製油所を建設しますが、ここでも、スペインにあるロトルクの子会社が400台以上のIQ電動アクチュエータを提供しています。

 


チャレンジ

4段階プロジェクトでは、製油所のタンクファームに取り付けた手動弁を電動化するため、900台以上のIQ電動バルブアクチュエータ(ATEX適合認証付き防爆仕様)を設置しています。そのうちの約800台はレトロフィットして既存弁に取り付け、残りは新設のバルブに取り付ける予定です。殆どの場合、工場でアクチュエータの取り付けや発泡性耐火塗料による耐火塗装を行い、そして、全アクチュエータをPakscan2線式デジタルネットワークで監視・制御します。

ロトルクは、会社設立後の早い時期から、レトロフィットしたアクチュエータを既存バルブに取り付けるという事を行っており、1960年代以降はレトロフィットを専門に行う事業分野があります。数十年間で、あらゆる規模のあらゆるプロジェクトに携わりました。実際、全てのケースにおいて、通常業務の中断を最小限に抑えながらレトロフィット済みの機器を取り付けるということが最も重要なポイントの1つでした。

サイジングサービスでは、現場で収集したバルブの基本データを基準にするため、バルブの条件に適合するアクチュエータを提供することができます。この事前作業に続いて詳細な現場調査を実施し、ケーブルの長さや付属品とともに、アクチュエータ取り付け用部品の設計に必要な寸法情報を収集します。IQアクチュエータは小型であるため、マニフォールドで見かけるようなバルブが密集した限られたスペースでも簡単に設置することができます。また、ロトルクでは、バルブへの接近が厳しく制限されている場合に備え、信頼性の高い方法と健全な設計原則を駆使して、延長スピンドル、台座、アダプター等、安全な遠隔駆動ソリューションを開発しています。

Pakscan2線式デジタル制御システムが加わったことにより、ロトルクは、アクチュエータ+制御機器の頑強な専用ネットワークを利用して、現場のバルブから制御ルームへとレトロフィット能力を拡大しています。Pakscanはバルブ駆動用機器に特化して設計されているため、ホスト制御システムやSCADAシステムと直接接続することができ、全体の制御ネットワークの単純化、アクチュエータの機能の最適化、信頼性の向上に貢献します。

Izmit製油所のレトロフィット作業は、ロトルクの現地の老舗代理店であるOmas Teknik Pazarlama Temsilcilik社が行いました。Omasの担当作業は、バルブ取り付け用部品の設計・加工、アクチュエータの新設、試運転、出張サポートです。現場へ納品前に、Omasのワークショップにて、新しいアクチュエータの組み立て及び動作試験を行っています。Omasが持つ現地水準の専門知識や経験、幅広い能力が、今回の大規模レトロフィットプロジェクトで成功を収めたキー要素なのです。

耐火

製油所において、火災のリスクは重大な懸念事項ですが、こういったリスクは、緊急遮断弁に取り付けたアクチュエータのように効率的かつ効果的に重大システムを保護することで最小化することができます。ロトルクでは、このような理由から防爆オプションを提供しており、1000℃を超える高温下でもかなりの時間、アクチュエータを作動させることができます。

Izmit製油所で採用されている「System-E」という発泡性塗料を使用した塗装システムは、IQ電動アクチュエータへの使用に特化して開発されています。工場で塗布した塗料がアクチュエータになじみ、炎の中では元の厚さの4~5倍に膨らんで溶岩のようなチャーを形成しますが、これがアクチュエータを遮断し熱を反射します。

最初にチャーが形成されると、チャーを貫通した熱が再び断熱材の作動温度に達するまで塗料は膨らみません。このプロセスは、断熱材を使い果たすか、消火されるまで繰り返し行われます。この効果的な断熱材は、80~90%の熱をはじくことが証明されており、1093℃の温度でも30分間アクチュエータを保護することができます。防水塗料に関しては、塗膜が最低限の厚さしかないため、塗装が設計上の特長や非貫通性に影響を与えることはありません。

 

 


ソリューション

非貫通、防爆、永久耐水といった設計上の特長を備えたIQアクチュエータには、石油化学産業において、長期に渡る信頼性と低ランニングコストを実現してきた実績があります。スイッチ機構や対向装置の代わりに、マイクロプロセッサベースの制御・計装機能を兼ね備えたソリッドステートの電子装置を使用することには多くのメリットがあります。

IQアクチュエータは、携帯サイズの設定器を用いて、カバーを取り外すことなく制御パラメータを設定したり、試運転を行ったり、データロガーの情報をダウンロードすることができます。試運転は、アクチュエータの画面(多言語対応)に表示されるメニューから行うため、主電源に接続しなくても素早く簡単に行うことが可能です。

また、設定器を使用して、こうした設定や試運転のデータをダウンロードし、試運転のパラメータが同様であれば、別のIQアクチュエータにアップロードすることもできるため、操作が簡単かつ高速です。また、アクチュエータのデータロガーからアクチュエータの動作情報をダウンロードしてアセットマネジメントに必要不可欠な診断情報を得ることもできます。

IQはデータロガーを内蔵しているため、開閉動作毎のトルクの状態等、イベント毎のバルブの動作履歴を得ることができます。また、ログデータには、日付と時間が記入され、イベント毎のデータを閲覧することが可能です。IQ Insightというパソコン用のソフトを使用して試運転時のバルブのトルク特性を比較し、動作中のバルブの摩耗傾向を把握したり、バルブの詰まりやその他の問題箇所を遮断することもできます。こういったログデータを解析して故障診断や予防保守に活用することにより、アセットマネジメントの改善に繋がります。

さらに、IQ Insigntを使用して事前にパソコンで設定を行ったり、設定情報を更新し、その情報を設定器や現場のアクチュエータに転送することもできます。

Izmit製油所の2線式デジタル制御は、ロトルク独自のPakscan P3システムにより行っています。Pakscan P3は、Pakscanの3代目にあたる製品であり、リピーター無しでも1本の通信回線で最大で20kmの地点から最大240台の現場機器を監視・制御することができます。

Pakscanはタンクファームや同等の流量制御プラントのような広大な環境に特化して設計されており、高信頼性、高効率、低メンテナンスコストの通信システムです。

 

Pakscanは現場のアクチュエータと中央の監視制御ルームとを繋ぐ重要な役割を担っており、機器やケーブルの故障時でも制御を維持することができる冗長ネットワークによって現場の通信を安全に行っています。

Pakscanは、世界中の多くの産業で採用されており、こうした産業では、複数のアクチュエータを接続して長距離通信を行う完全冗長2線式バス通信が、従来のハードワイヤード接続より遙かに設置・配線コストが安く、監視・制御の信頼性も高いと認識されています。Izmit製油所の場合は広大な製油所であるため、異なるエリアのIQアクチュエータが合計20のPakscan P3デジタルバスネットワークによって、監視・制御されることになります。現場用のPakscan P3マスターステーションによって現場のSCADAシステムに接続されており、各ネットワークは、この現場用のマスターステーションで制御されています。

Pakscanのネットワークは、独自の専用プロトコルを使用しており、比較的低い伝送効率ですが非常に高速・短時間で更新することが可能です。データフィールドを最小まで圧縮することができるため、各データレートで、一定時間内により多くのデータをネットワーク通過させることができます。その結果、システムはリピータがなくても、高速で信頼性が高く効率のよい通信を維持したまま、長距離通信を行ったり、複数のアクチュエータを監視・制御することができるのです。

P3マスターステーションでは、データに変更があると現在の状態やアラーム表示が更新され、ネットワーク上の全アクチュエータの状態がリアルタイムで表示されます。

アクチュエータの状態に変化があると、イベントロガーは、デジタル・アナログの全コマンドを記録することは勿論、主な変更点を全てキャプチャーして保存します。記録したデータはマスターステーションやウェブ上で閲覧することができ、また、このデータを保管して将来的にアセットマネジメントに活用することもできます。

P3マスターステーションは着脱式メモリーカード搭載のロングタームデータロガー(LTD)を内蔵しているため、データロギング機能やデータ診断機能をさらに拡張することもできます。着脱式のLTDカードに保存されたデータは1日単位でログとして記録され、Modbusのコマンドメッセージやアクチュエータの状態の変化、及びアラームの変化を個別にキャプチャーします。なお、このLTDは数年分の情報を保存することができ、保存したデータは、パソコン用のLTDソフトウェアを使用して閲覧することができます。ホストシステムへの接続はローカルアリアネットワークとEthernet(イーサーネット)通信により行います。データのやり取りや制御には、有名なModbus TCPを使用します。

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