怖いもの知らずのフロー制御

LNG産業, 2022年3月


怖いもの知らずのフロー制御

フロー制御:天然ガスパイプラインからLNGまで

石油&ガス産業では、アクチュエータが必要不可欠です。アクチュエータはフロー制御、即ち、産業アプリケーションにおいて液体や気体の管理を行っています。フロー制御機器は石油&ガス産業の3部門、即ち、上流・中流・下流のすべてで使用されています。本記事では、従来のパイプラインを取り巻く課題やチャンスは勿論、液化天然ガス(LNG)の生産・輸送用パイプライン独自の状況についても調査してまいります。

従来の中流パイプラインにおけるフロー制御

従来のパイプラインは、中流(石油&ガスの輸送)プロセスの一環と考えられており、輸送距離は数千マイルにも及ぶことがあります。パイプラインは、天然ガス生産拠点(輸入ターミナル及びLNGターミナルも含む)と主な消費地である人口密集地とを結ぶ非常に重要な架け橋であり、また、パイプラインを利用して、LNGから再ガス化した天然ガスを輸送することもあります。必要なフロー制御を行うことにより、動作の信頼性と効率が最大化されるのです。アクチュエータによる精密制御により、人為的ミスをなくし、自動プロセスをより正確に実行することが可能となります。しかし、パイプラインのアクチュエータに関してはおそらく安全性、即ち、アクチュエータのフェイルセーフ機能や緊急遮断(EDS)機能により重要な安全動作が行われるのか、が最も重んじられます。石油・ガスが意図せず流出し続けると環境や人体の安全に影響を及ぼす恐れがありますが、効果的にこれらを遮断することができれば、影響を軽減または無効にすることが可能となります。

石油&ガス制御用バルブの駆動には、空圧式、油圧式、電動式アクチュエータを使用することが可能です。どのタイプのアクチュエータを選択するかは、動力源、場所、制御方式、制御対象の流体、作動頻度等、複数の要因に左右されます。フルードパワーアクチュエータはフェイルセーフ機能、高トルク・高スラスト、更には動作速度が速いことから、大規模パイプラインのアプリケーションでは、フルードパワーアクチュエータが選択されます。多くの場合、高圧ガス供給用にカスタマイズされた適任の制御システムが使用されます。フルードパワーアクチュエータは、空圧式、高圧高圧式、電油式に分類されます。スプリングリターン空圧式アクチュエータはフェイルセーフ動作を最も容易且つ正確に実行できることから、ガス・石油の両パイプラインで多用されています。GPレンジ(全長約6mにまで及ぶ、最大68台の制御が可能なロトルクアクチュエータ)等の大型アクチュエータは、遮断動作用の制御盤を搭載しており、このような安全機能を備えているために、パイプラインでの使用に好適なのです。パイプライン内を流れる高圧ガスがアクチュエータの動力源となる場合は、高圧空圧アクチュエータを使用しますので、減圧システムを用意する必要はあります。この高圧空圧アクチュエータはESD機能や安全機能以外に、低圧時の閉鎖やパイプラインの破裂等の制御機能も有しています。また、辺境地や危険環境に好適であり、必要に応じて太陽電池でも作動させることができます。

電油式アクチュエータは電動動作の容易性と油圧制御の精密性、スプリングリターン式によるESD動作及び安全動作の正確性を兼ね備えており、もう一つの選択肢となり得るものです。ロトルクのスキルマチックアクチュエータは遠隔地向けの自立型ソリューションであり、セーフティクリティカルなアプリケーション向けに設計されています。スキルマチックは、必要に応じて数秒でバルブを閉じることが可能であり、部分ストローク機能やESD機能も標準搭載しています。インドでは、現地規制での義務化に伴って安全関連機能のニーズが高まり、これに対応するため、2018年、同国のタンクファームにスキルマチックアクチュエータが設置されました。このスキルマチックアクチュエータは42インチ及び48インチのトリプル オフセット バタフライ弁を操作しており、タンクの過充填を防止します。

天然ガス輸送用の大型の工業バルブは、何マイルも先の過酷な地形を通っており、このような場所では、圧縮空気や電源でさえも入手不可能です。また、パイプラインのガス以外に、アクチュエータの動力源を得られないこともあります。このような場面で使用される過酷条件用アクチュエータは、パイプライン、特に塩害地域、(腐食可能性が高い)沿岸地域や、高温地域、乾燥地域、温度変化の激しい砂漠地帯に設置された大型バルブ対して、日常遮断及び安全遮断機能を発揮します。例えば、ヴェネズエラ北部の極低温LNGパイプラインの重要ポイントには、アクチュエータが設置されており、このパイプラインを利用してガスやLNGを輸送しています。ここに設置されたアクチュエータがパイプライン沿いのボール弁を制御したり、ESD機能を提供し、LNGの全生産段階で要求される高水準の安全性、信頼性、セキュリティを提供しています。LNGには独自の課題があります。

液化天然ガス

特に、LNGに目を向けると、天然ガスの中流パイプラインで発生する多くの課題は、LNGにも当てはまります。LNGは主に、タンカーや船舶で輸送されますが、パイプラインもまた、ターミナル、液化設備及び再ガス化システムにおいて、重要な役割を果たしています。常に、安全は、オペレータにとって最優先の関心事でなければなりません。緊急時には、アクチュエータのフェイルセーフ機能やESD機能が働いて製品フローを遮断し、これ以上の損傷を防止することができるため、このようなアクチュエータの機能は、安全且つ正確な動作においては必要不可欠です。また、特に、危険且つ過酷な環境では、その傾向が顕著です。F例えば、チリ南西部のLNGパイプラインは、ロトルクのフルードパワーアクチュエータを設置することにより、動作が向上しました。 同LNGコンプレックスには、タンカーからLNGを受け入れる海上ターミナルや、再ガス化してパイプライン経由でチリ中心部まで輸送するためのプラントがあります。過酷条件用空圧式・油圧式アクチュエータは安全・遮断機能を提供します。  海洋環境にさらされるため、同アクチュエータに付属の制御システム一式及び部品には、耐食性の材料を使用しなければなりませんでした。オーストラリア・クイーンズランドのLNG拠点には、バタフライ弁を操作するための空圧式アクチュエータCP及びGPを設置しました。これらアクチュエータは、独自の動作が必要なため、制御パッケージによりカスタマイズされています。メインパイプラインの遮断弁に、大型のガスオーバーオイルアクチュエータを設置しました。このパイプラインはクイーンズランド中部の天然ガス生産井とカーティス島沿岸のLNGプラントとを結んでいます。

 LNGの輸送には、極端な低温にも耐えられるバルブやアクチュエータを使用しなければなりません。ガスを液化するには、-162℃まで冷却する必要があります。そのため、LNG用のバルブ及び設備は、非常に低温でも作動可能であり、しばしば危険且つ過酷な環境であっても。低温貯蔵、天然ガスへの再ガス化及び中流の貯蔵施設までの輸送に必要な安全性と信頼性を有していることが必要不可欠です。大抵の場合は、低温バルブが必要です。LNGターミナルでは、ロトルクのスコッチヨークアクチュエータGP及びCPを使用して、貯蔵・再ガス化プラントの低温用ボール弁及びバタフライ弁を操作しています。 2020年には、4基のLNG貯蔵タンクと1基の再ガス化プラントを有する韓国のLNGターミナルに、GPアクチュエータを設置しました。このGPアクチュエータは、同ターミナルの32インチのメインパイプラインに設置され、開閉動作により、気体状のLNGと天然ガスの流量を制御しています。緊急時には、フェイルセーフ機能(作動方向の選択が可能)により、ガスの流れを即座に遮断することが可能です。 また、GPアクチュエータはインドの天然ガスパイプラインでも使用されていました。南西部沿岸の大容量LNG輸入ターミナルから続く879kmのパイプライン沿いに設置された埋設バルブを操作しESD動作を実行するため、80台を超えるユニットが提供されました。

電動アクチュエータは、ターミナル及び関係各所にて、天然ガスやLNGの流量制御を行っています。大抵の場合、設定地点間でバルブを繰り返し作動させる必要がありますが、電動アクチュエータの場合は、高い分解能と再現性で精密な動作を行います。2019年に、マレーシアの現場(再ガス化ユニット、LNG貯蔵タンク、LNG輸送船の積み込み・積み下ろし用のバースが建設された現場)にIQ3電動アクチュエータを設置しました。現在では、これらアクチュエータが、ターミナル - 船舶間の流量制御を行っています。 また、オーストラリアのSurat盆地には、CVQ電動アクチュエータが設置され、同アクチュエータがセパレータスキッドのボール弁を操作しています。電動アクチュエータは、その信頼性、安全性、効率性から、高く評価されています。その多くが防爆認証を取得しており、有害・危険場所での使用に好適です。

再ガス化のためのフロー制御

LNGを天然ガスに戻すためには、再ガス化というプロセスが必要となります。輸入ターミナルでLNGを陸上に移動するため、通常は、輸入ターミナルでLNGの再ガス化プロセスが実行されます従来型のパイプラインを経由してLNGを輸送し、燃料、発電、暖房に使用するには、LNGは気体状でなければなりません。多くの場合は、空圧式スコッチヨークアクチュエータを使用してLNG及び天然ガスのオンオフ制御を実行します。 同アクチュエータはスプリングリターンモジュールを内蔵しているため、フェイルセーフ動作の方向を選択することが可能です。再ガス化のプロセスの中心的な部品である気化器は、バルブ(殆どの場合、小型であり、コンパクトに配置されています)を搭載しており、このようなバルブの操作には、小型且つ高速のアクチュエータが必要です。本段階では、その他に、ガス排気弁、蒸気排出、タンクのポンプのエア抜き、アンロードバルブの制御も行います。

結論

従来型の大型パイプライン(天然ガスを何千マイルにも渡って陸上輸送するためのパイプライン)でも、LNGの生産・処理用の小型パイプラインでも、アクチュエータが必要です。アクチュエータは、流体及び気体の制御を行う重要機器であり、中流部門の様々なアプリケーションで使用されるパイプラインのバルブを正確、効率的且つ安全に操作します。大抵の場合、LNG用のバルブは低温仕様であり、同バルブを操作するためのアクチュエータは、堅牢且つ強固でなければならず、また、過酷または危険な環境でも正確に機能しなければなりません。

PDFのダウンロード