水道産業におけるアセットマネジメント-バルブアクチュエータの展望

  • 部門: 廃水
  • カテゴリー: 電動アクチュエータ 
  • 製品: IQ - Standard

概要

ロトルクのIQインテリジェントアクチュエータは水道産業のアセットマネジメントに利用されています。同アクチュエータは、マスターステーションに対応しており、データロギング機能も備えているため、プラントを効率的且つ正確に稼働させることが可能です。


概要

水道及び下水処理業界が、プラント外部から取得した正確で関連性のあるデータを収集・解析することにより、効率的にアセットマネジメントを実施することのメリットを認識するのに時間はかかりませんでした。このようなデータから機器の状態を特定したり、プラントのリアルタイムの状況を知ることができます。時間ごとのデータを監視することにより、突然の中断を回避したり、前もって効率的なメンテナンスプログラムを計画することが可能です。効率的なプラントの稼働は金銭面だけでなく、事故や漏出等の潜在的なトラブルを防止することで、環境面においても重要な役割を果たしています。

水道及び下水処理の環境においては、沢山のバルブ及び、プラントの全プロセスで媒体の流量を制御するという同装置の必要不可欠な機能が、このような情報収集のための手段として注目されるようになりました。バルブの状態は、プラント全体の状態を明確に反映しています。そのため、バルブアクチュエータから常時データを取得したり、(アクチュエータ配下の)バルブの状態に関する最新の情報をを知ることができれば、多くのメリットを得ることができます。過去10年で、アクチュエータの確立された機械設計は一部しか変更されていませんが、電子技術やデジタル通信技術によって様々なイノベーション及び特長が実現したこと等、機能は急速に進歩しました。ロトルクの最新型IQアクチュエータは、バルブの操作は勿論、性能に関する情報を収集・保存し、このデータを現場で表示したり、コントロールセンターに転送して解析・診断を行う、といった方法で自己管理することが可能です。ロトルクは、このような技術の進化における先駆者であり続けています。そのため、同社が最近リリースした3代目IQインテリジェント電動アクチュエータでは、プラントの状態表示をさらに改善することが最優先されていました。


チャレンジ

アクチュエータ開発の最初の数年では、ロトルクは、集中的に外界からのシール性に着目し、そのおかげで、アクチュエータ内の電気機器への湿気や塵の侵入を防止するOリングの採用に至りました。このような取り組みにより、電子化・デジタル化時代以前に、可逆コンタクタスタータ及びリレー等の多くの電気部品をアクチュエータ筐体内に収容することに成功しました。また、このような哲学の成功に後押しされて、1992年に初代インテリジェント電動アクチュエータが開発されました。初代IQは、電子センサー(トルクセンサー及びリミットセンサー)、非貫通設定技術、初代データロギング及び診断機能が導入された画期的な製品でした。

アセットマネジメント環境で、ランニングコストやメンテナンスコストを最小限に抑えつつ性能と信頼性を提供するための新しい方法が発見され、今日では、このような制御及びフィードバック機能がアクチュエータの設計を促進する鍵となりました。

3代目IQでは、アクチュエータの現場開度表示窓は多機能画面へと進化を遂げ、現場表示、バルブ及びアクチュエータの状態、アクチュエータの構成・設定用メニュー画面、故障診断及び資産管理情報を提供できるようになりました。かつては単なる現場開度表示窓だったものが、今では、プラントのプロセスとの窓口となりました。3代目IQの多機能画面では、現場開度表示に加えて、GUIも搭載されているため、設定や校正が容易であり、また、アクチュエータの性能に関する重要なデータも表示されるため、ユーザー側でバルブの作動状態を判断したり、障害発生時期を予測することが可能です。近代的なアクチュエータは、このようにして重要なアセットマネジメントツールとなったのです。

機械的仕様に関しては、取り外し可能なスラストベース設が大型モデルの設計にも採用されるようになり、バルブの開度に影響を及ぼすことなく、アクチュエータをバルブから取り外すことが可能となりました。ギアケース内では、シンプルな設計のウォームギアとホイールギアトレインがオイルバス内で潤滑されており、密封性を保持しています。これにより、試行錯誤、試験を経て証明された高信頼性が不動のものとなりました。アクチュエータの出力トルクの正確な測定機能もまた、ウォーム及びホイールによって実現した機能です。ウォームシャフトの軸の力は、常にウォームホイールによって生成されたトルクに比例しており、長時間の操作でギアの効率が変化してもその影響を受けることはありません。トルクの測定は、皿ばねや、摩耗したり時間と共に特性が変化するようなその他機械装置ではなく、力変換器によって行われます。

バルブの動作ストロークのトルクデータは、試運転調整の「足跡」としてアクチュエータのデータロガーに記録され、その後はバルブの作動毎に記録されます。このようなデータは必要不可欠なデータであり、アクチュエータからダウンロードしてメンテナンス計画の作成に活用されます。


ソリューション

バルブの制御は、アクチュエータによる正確で繰り返し性が高く、且つ信頼性の高い開度測定に依存しています。これを達成するため、IQには特許取得済みのアブソリュートエンコーダを採用しています。アブソリュートエンコーダとは、従動(駆動された側)ギアの相対位置を検出して、出力されたアクチュエータの位置とそれに対するバルブの位置を算出する電子機械式位置測定装置です。アブソリュートエンコーダには、開度変化の追跡に動力が不要であるというメリットがある一方で、アブソリュートエンコーダがあることでギアトレイン(駆動系)が複雑になり、信頼性が低下するというデメリットもあります。現在まで、エンコーダ内のメカニカルギアトレイン及び検知装置は、出力された動作や必要とする分解能の上昇に伴って大型化してきました。簡単に言えば、大型バルブや調整弁には更に複雑なエンコーダが必要でしたが、このようなエンコーダーは多くのギアやセンサーを搭載しているために、故障の恐れのある箇所も多く存在します。

IQのアブソリュートエンコーダは、最新の技術を採用し、数年間に及ぶ動作試験を経て、このような問題を克服しました。同エンコーダーは無接点であり、可動部が4か所しかなく、出力軸の回転を8000回転まで測定することが可能な、高分解能・冗長性・自己チェック機能を備えたエンコーダです。既存のアブソリュートエンコーダとは異なり、本エンコーダの設計は、電源のオンオフにかかわらず位置測定が可能でありながら、高い位置計測精度を有しています。

アクチュエータの表示窓からプラントの状態を知る
IQアクチュエータ画面の表示窓(強化ガラス製)は、操作、双方向通信及びアセットマネジメントのための非貫通且つ多機能ポータルです。付属の携帯式設定器は赤外線信号を利用して通信を行い、ペアリングの前に、アクチュエータ及び設定器の両方ともがロトルク製品であることを確認します。更なる通信の手段として、Bluetoothリンクの有効・無効を切り替えることが可能であり、これによって、本技術により実現したセキュリティが更に強化されています。また、赤外線プロトコルを利用することで、旧型のIQ用設定器からアクチュエータの基本機能を作動させることが可能ですが、PCにダウンロードする場合はBluetoothを利用します。

アクチュエータのディスプレイ自体は、視野角が非常に広いダブルディスプレイです。アクチュエータの設定及び操作全般は手前のセグメントディスプレイから行い、詳細な診断・作動データは奥のディスプレイに常時表示されますので、プロセスの状態を把握しておくことが可能です。診断グラフ、要求開度と開度、トルク&開度、アクチュエータの設定等、常時確認したい情報に応じて、画面を選択することが可能です。バルブの開度は小数第一位まで表示されますので、診断解析が非常に正確で精密です。診断グラフはプロセスへの窓口であり、バルブのトルクがグラフ表示されており、状況のリアルタイム解析を容易にします。

現場と制御ルームの両方で多くのデータを取得できるようにしたいというエンドユーザー様のご要望にお応えして、先進的なデータロギング、ディスプレイ及び通信機能が導入されました。また、プラント全体で発生している異常を正確に知りたいというご要望を受けて、アクチュエータ内部に新しいデータチャンネルを設計し、ネットワーク通信により多くの情報を入手できるようにする必要が生じました。

アクチュエータのデータロガーから沢山の診断情報を抽出し、Insight2を起動したPCにダウンロードすることが可能です。設定器と赤外線またはBluetooth通信を利用して、最大10台のアクチュエータから取得したデータをPCに転送することができます。また、データロガーの情報は、ロトルクパックスキャン無線デジタルネットワークを経由して転送することも可能です。パックスキャンマスターステーションはEthernet対応であるため、IPアドレスを入力することにより、制御ルームからLANまたはインターネットを利用してアクセスすることができます。

マスターステーション、フィールドネットワーク(有線・無線)、及び同一ネットワーク上に存在する各アクチュエータの状態や診断情報を表示するためのウェブページが予め用意されています。

様々な型のバルブがあり、各バルブによってトルク要求曲線は異なります。新たに取り付け・校正を行ったバルブアクチュエータからトルク要求曲線を取得し、将来的に得られる要求曲線を評価する際の参考にすることができます。バルブは年月が経過すると、内的及び外的要因により、開閉が困難になります。例えば、潤滑が為されていないステム上昇式ゲート弁のねじ込み式ステムは、バルブストローク中のトルク要求を均一に上昇させます。Insight2ソフトウェアは、このような問題を特定することにより、プラントを中断させることなく計画的にメンテナンスを行い、総合的な資産管理の改善に役立てることが可能です。

総括すると、IQのような近代的なバルブアクチュエータの機能により、信頼性の向上は勿論、予防保守を改善し、アセットマネジメントプログラムへの組み込みの機会が広がります。これは、アクチュエータ内の様々な試運転調整及び動作データをデータロガーで記録し、これを現場のアクチュエータと制御センター及び診断センターとの通信専用の高信頼性チャネルと組み合わせることで実現します。


詳細情報

顧客名:水道産業のアセットマネジメントにおけるアプリケーション
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