水力発電の管理方法

世界の発電エンジニア, 2022年5月


水力発電の管理方法

世界がエネルギーの転換期を迎え、再生可能エネルギー部門が益々重要となっています。環境に悪影響を及ぼす従来のエネルギー形態からクリーンエネルギーを供給するシステムへと切り替えることは、気候危機に取り組む上での基本概念です。我々が脱炭素化と気候を脅かす温室効果ガスの排出削減に引き続き取り組んでいく中で、風力、太陽光、水を動力源とする再生可能エネルギーシステムは、重要な役割を果たすことになるでしょう。2021年11月にグラスゴーで開催されたCOP26サミットにおける主な結論は、地球温暖化を1.5℃またはそれ以下に留めるという目標の一環として、再生可能エネルギーへの投資を奨励することでした。

水から電力を生成するという慣行は、何百年も前から行われてきたことであり、その一例として、産業革命期以降使用されるようになった水車があります。今日では、水力は水力発電に用いられており、水から低(またはゼロ)炭素電力を生成します。2020年には、水力発電が世界の発電量の1/6を占めており、水力発電が世界最大の低炭素発電源となりました。国際エネルギー機関(IEA)の2021年の水力発電報告書では、「2050年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする」という目標を達成するために、将来的な投資の重要性と、水力から生成される電力を増やすことが強調されています。2020年には、水力発電の発電量が3%上昇しました。IEAの報告書には、このような重要な成長を継続するには、この期間に、年間平均48GWのグリッド電力が必要である、との記載があります。このような発電量の大幅増加を達成するには、特に、許可を簡素化し、プロジェクトの持続可能性を保証するために、多大な努力が必要となります。

水力発電におけるフロー制御

フロー制御とは、再生可能エネルギーも含めた幅広い産業の日常業務における、液体及びガスの動きのことであり、フロー制御プロセスでバルブを操作・制御するには、アクチュエータが必要不可欠です。制御門、貯水池・ダム、ペンストック、発電機、水力タービン等、水力発電の多くの段階で、フロー制御が用いられています。また、水処理、水供給、排水、エアコンプレッサシステム等の補助システムでも、しばしばアクチュエータが必要とされます。あらゆるエネルギー生産システムと同様に、最終発電量を達成するには、プロセス内の複数のシステムが効率的且つ安全に作動しなければなりません。再生可能エネルギーの発電プラントは、複雑であり、技術を要します。このようなプラントでは、従来の化石燃料ベースのシステムと同様に、従来型の火力発電所が必要とするようなフロー制御が必要となります。

電動アクチュエータの役割

ロトルクは再生可能な水力発電に携わり、国連の持続可能な開発目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」 を支援しています。水力発電所でもっとも一般的に使用されるフロー制御装置は、ロトルクIQ3インテリジェントアクチュエータのような電動アクチュエータです。中国にあるJinsha川(長江の上流)のダムのカスケードの一部であるバイヘタンダム水力発電所には100台を超えるIQ3アクチュエータが 提供されました。バイヘタン水力発電所は、2014年に建設を開始、2021年に操業を開始した大規模発電所であり、実質発電量は16,000,000KWを誇ります。IQ3アクチュエータは、発電所内の水供給システムや、排水システム、 エアコンプレッサシステム、そして、その他補助システムを駆動しています。同アクチュエータは、信頼性が高く堅牢であること、適切な電源が入手可能であること、防水・防塵仕様(IP66または68)であることから、水力発電アプリケーションに最適です。

また、同アクチュエータは、米国で最大の発電量を誇るグランドクーリーダム(所在地:ワシントン州)にも設置されました。 同ダムは、3基の水力発電所と1基のポンプ発電プラントを有する重力ダムです。IQ3アクチュエータは、現場効率改善のための重要アップグレードの一環として設置されたものです。同アクチュエータがコーン弁を操作することにより、ペンストックシステムの水を精密に制御することが可能となりました。 IQアクチュエータの制御により、バルブを徐々に開くことで、ペンストックに少しずつ水を充填することが可能となったのです。アクチュエータの正確性は、現場の33台の水力発電機における水撃作用(ウォータハンマー)を防止する上で、非常に重要です。

また、水力発電所には、非危険アプリケーション向けに開発されたモジュラー型電動アクチュエータCKも設置されています。 実際、メキシコのAlameda Hidroeléctrica PlantaにはCKアクチュエータが設置されており、同アクチュエータがタービン(発電量:最大6MW)に向かう水の流量を制御しています。主電源を供給するだけで、手動バルブの自動化が可能であったため、CKアクチュエータが選択されたのです。

実状

水力発電プラントの操作者は、メンテナンスやサービスの提供についても考慮する必要があります。IEAの2021年の水力発電に関する報告書では、老朽化した水力発電所のメンテナンスの重要性が強調されています。 ロトルクは、既存のフロー制御資産及び使用中のサービスシステムを注意深く管理することで、プラントの寿命を延ばすことが可能です。陳腐化の不安を管理し、資産の全寿命を総合的に考慮することで、現場のアップタイムが増加しますが、これは長期的な連続稼動を実現する上で必要不可欠なのです。 

 

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